アトピーの鍼灸
42才 男性
数年に渡りステロイドを使用し、他の鍼灸院でも治療していたのですが転勤により横浜に引越しをされ、約2年前にアトピーにて相談にいらっしゃった方の症例です。
来院当初はかなり皮膚が厚く痞硬し赤く黒ずんでおられました。長期のステロイド使用による後遺症かと思われます。この方は脱ステを敢行された後鍼灸治療に切り替えたのですが、脱ステ直後暫くの間はかなり反動が出て苦しんだとのことでした。参考写真①は来院当初のものですが、固くなった皮膚は割れ、そこから滲出液が滲んでおられました。また皮膚炎が特に多く出ている箇所には特徴があり、後頚部や首周り、特に手の母指と示指側にひどく出ておりました。
首や手の甲側というのは東洋医学的な視点でみると、人体の中でも陽のエネルギーが停滞しやすい場所であり、また母指と示指のエリアは経絡的に言うと「肺」と「大腸」にあたります。東洋医学では肺は皮膚の具合を統括すると言われ、大腸は毒素を分解排出に関わるとされております。人体では肝と大腸が解毒に関わり、腎と肺とがその毒素を尿と汗、呼気として排出するため、アトピーの治療ではここのあたりが肝腎要になってきます。この方はこのエリアに病証が特にひどく出ていることからも、肺と大腸と肝に効くツボを中心に解毒機能を高めました。使った経穴は正経を中心に、董氏奇穴の重子重仙穴・三黄穴・腿駟馬穴を加えた。
週一回のペースで治療を始め、症状軽減後からは二週に一度のペースで治療に来られ。二年経過した状態が写真②です。
治療の度にその二日後あたりから皮膚が少しずつボロっと剥けてはまたやや戻りを繰り返しながら辛抱強く治療を続けた結果が上記の写真です。かなり良くなっているが分かると思いますが皮膚の痞硬と黒ずみが消えて割れることが無くなりました。首からも汗がかけるようになったと言い、首に熱がこもる感んじが消失しました。特に印象的だったのは、この方は何時も太腿内側が冷たいと仰っていたのですが、最近ではその自覚が無くなり、また以前より体力がついた感じがするそうで、多少仕事で疲れたりお酒を飲んだ翌日でも以前より元気だとおっしゃるようになりました。肝臓につながる経絡というのは太腿の内側を通るため、それが改善され解毒機能が上がった為だと思われます。
このような良効を得たのは鍼灸治療の影響だけではありません。この方はアトピーの患者様の中でも特に努力された方で、男性患者様には珍しく、食事に気を配りお酒を控え、治療の途中で症状が一進一退をしながらもそれにめげず治療と努力を続けた結果だと思います。
精製砂糖で作られた製品やお酒などは食べ物の中でも特に陰性品と言われ、身体を陰性に傾けてしまうため、アトピー性皮膚炎に限らず皮膚病全般においては特に厳禁です。脳が嬉しい食べ物より大腸菌が喜ぶ食事を心掛けることが重要です。
※この症例は功を奏した一例であり、全てのアトピー性皮膚炎が改善する訳ではありません。鍼によるアトピー性皮膚炎の治療は長期に渡ることが多く、徹底した食事管理も必要となります。