食える鍼灸師の資質


食える鍼灸師に必要な資質とは


 鍼灸師を目指す前に

さて、ここまでまで鍼灸師の現状(惨状?)を簡単に書いてきましたが、それでもなお鍼灸師に魅力を感じ、目指してみたいという方へひと言アドバイスを申しあげたい。散々ネットでも書かれている通り、鍼灸師というのはとてもオイシイ仕事ではないし絶対食える職業でもない。しかしもし独立開業して軌道に乗れば決して儲からない業種でもないことは述べた。(食えない鍼灸師を参照)

鍼なんて恐いし怪しいし結構です
鍼なんて痛そうだし、怪しいし、怖いので 結構です

ところがそれ以外に、「私はお金儲けではなく鍼灸で人の役に立ちたい」や「ホスピスで活躍したい」など、いわゆるボランティア精神で鍼灸師になりたいという方もいらっしゃいます。大方何か感動秘話みたいなものを本で読んだのだと思いますが、現実はそれほど単純ではありません。何故なら鍼灸を知っている人からは多大なニーズがあるが、良さを知らない人にとってみればタダでもお断りのマイナーな世界だからである。また完全に作用機序が科学的に証明されていない鍼灸が、生死の境の現場の中、チーム医療でありエビデンスが常に求められる現代医学が中心の病院の中で活躍できる機会など微々たるものである。そして誤解を恐れずに言えば、東洋医学というのは自己治癒力の賦活が主眼なのですから、重度な状態になってからではなく、まだ元気な時にこそ活用して欲しいものある。風前の灯火になってようやく東洋医学の良さに気付いてもたいして役には立ちません。

鍼灸師になって人を助けたいと思う気持ちは大切ですが、その前に自分がその鍼灸で生きていけるのかを、先ずはしっかり検討していただきたいと思います。

 

生まれ変わってもなりたいと思える職業

何だか夢のない事を散々言ってしまいましたが、では私自身が鍼灸師という職業に就いたことに対しどう思っているかと言えば、他にもやってみたい仕事が沢山あるので一概には言えませんが、生まれ変わってもまた鍼灸師になっても悪くはないなと思っています。何故なら東洋医学を色々勉強させてもらったお陰で、世の中に蔓延している色々な治療薬や健康法にいちいち惑わされることはないし、病気になったらどうしようなどと強く不安に思うこともない。そして開業して軌道にさえ乗ることができれば、金銭的な面でも、社会的ストレスからも完全にフリーになれる点が何よりも魅力的だからである。

 

成功する鍼灸師

 

 開業に必要な資質とは

さて、鍼灸師の給料と開業で鍼灸師なら開業を目指すべきと書きましたが、では開業にするのに向く資質とは何でしょうか。ネット上をみていると「鍼灸師になったら給与は幾らくらいですか」とか「食べていけますか?」といった質問が非常に多く見られます。逆に「食える鍼灸師になるにはどうしたらいいですか?」や「良い鍼灸師になるにはどう勉強したらいいでしょう?」等の意見はほとんど見かけません。「〜したら〜してくれますか?」のような他力本願的で思考停止な意見があまりに多いような気がします。成功する鍼灸師ならネット上でそんな質問をしている暇があったら、既に何か行動しているよと言ってしまうと、出来る人は元から出来るで話が終わってしまいますが、鍼灸師が「魅力のない食えない職業」というイメージがついてしまったがばかりに良い人材が残らないのであれば、鍼灸業界は今後増々廃れていくでしょう。

 

必要なのは問題解決能力

ではどんな人材が「治療家」に向いているのかといえば、何か問題が起こった時に、とにかく自分で「調べ」「行動」、そして「失敗する勇気」のある方が向いているのではないかと思います。あえて「鍼灸師」とは言わずに「治療家」といったのは、代替医療を必要としている患者さんというのは、基本的に今の現代医学から脱落した人達なのであり、鍼灸師もそんな患者さん診る治療のうちのひとつでしかありません。科学というファーストチョイスから外れて「さて困った。」となった時、もはや絶対的な勝ちパターンはありません。そこは知識と経験と発想がものをいう世界であり、そのように考えれば治療家とはまさに「この患者さんの抱えている問題を解決できる方法を何とか探す仕事」なのであり、つまり「問題解決能力の高い人」が良い治療家としての資質だと言っていいと思います。そして食える鍼灸師になる秘訣も、実はこの「問題解決能力」なのであり、資格があるから患者や仕事が来る訳では決してありません。開業するということはつまり、治療から掃除から経営まで、それこそ全方向性に「一人上手」にこなす能力が必要になってきます。状況によっては人それぞれに正解があり、色々な諸問題や困難を自分一人で何とか創意工夫して立ち向かえないなら、到底現代社会の複雑なストレスや諸事情で病んでしまった患者さん達の問題を解決できる余裕などありません。そういう視点から考えれば、おのずと鍼灸師として開業するのに自分が向いているのかどうかの参考になるのではないでしょうか。

もし貴方が「鍼灸師になりたい」あるいは「将来鍼灸師として開業をしたい」とお考えでしたら、一度自分は独立志向に向くタイプなのかどうか考えてみてください。もし「あらかじめ用意された道を、言われた通りに行くほうが安心」なタイプなら、鍼灸師になるのも開業もしないほうが無難かもしれません。

 


横浜関内|王漢方鍼灸院