楊維傑氏のセミナーの合間に週に2回ほど臨床見学を許して頂いた。
その臨床の流れはというと、患者が来院するとまず院長室に通され、10分ほど中で診察を受けると患者は隣の部屋のベッドに自ら移動し、患者が四組ほど揃うと先生が部屋から出てきてカルテを見ながら一人につき約8本ほど針を打ち終えるとまた部屋に帰っていくという感じであった。私自身は先生が治療を始めるまでの間は部屋の外で待たされたので、中でどのようなやりとりをしているのかは伺い知ることは出来ず、只々病名と何処に針をしたのかを見るだけの繰り返しだったので、正直やや退屈な日々を過ごしていた。
その臨床はというと、それまで日本で学んできた鍼灸臨床とは随分と違っていて、経絡治療家的な臨床を叩きこまれた自分にとっては、どの治療もあまりにダイナミック過ぎて正直にも治療を受けてみたいとは思えないというのが当時の私の感想でした。一度、原因不明の炎症か何かで目がいつも赤くなるという初老の女性が来院した際には、いきなりバケツを持たせ、ほぼ槍のような三稜針で太陽を二箇所瀉血したかと思ったら、両手で頭を下に押さえつけると、バケツはみるみる血で赤く染まっていた。今でこそその臨床意義がよく分かるが、当時は勉強不足だったのに加え、何故そのような治療をするのかの説明も聞かされないままだったので、日本人にこんな治療は到底出来ないなと只々圧倒されるばかりであった。