経絡治療を勉強していた頃愛読した本がある。「伝統鍼灸治療法 池田政一著」である。
序文にこれまた学生の頃によく愛読したチベット医学、世界の民族医学研究家として知られる井村宏次先生が執筆しており、その中の一節に「経絡治療を方法論として明快に説いている中国人は筆者の知る限りでは台湾の楊維傑氏ぐらいである。」と書かれているのが目に止まり、台湾にも経絡治療をする先生がいるなら、それは是非帰郷も兼ねて勉強してみたいと思い、調べてみたらちょうど新期講座がスタートすると知り、すぐさま留学することを決め台湾に渡った。
日本に長年育った影響ですっかり中國語が鈍って頼りなかったので、ついでに「國語日報語言中心」に通い、同時に楊維傑氏による講義に参加。傍ら特別にお願いをして週二日ほどは治療院での見学を許してもらった。その楊維傑氏が講義中にしきりに連呼していたのが「董氏奇穴」で、これが董氏奇穴なるものを認識した最初のきっかけである。
講義や臨床を見学する中で、倒馬針法、手指針、放血療法を目の当たりにし、日本の軽微な経絡治療を想像していた当時の私からすれば全てが青天の霹靂で、経絡治療家がよく言う太い針をすれば陽気が飛びやすいどころの騒ぎではない治療のオンパレードだった。
「これのいったいどこが経絡治療なんだ?」
痛い針があまり好きではない私にとってはー「井村先生にはすっかり騙されたな」と思う日々がしばらく続いた。
横浜関内・みなとみらいの王漢方鍼灸院