倒馬の意味①

董氏奇穴の針法の特徴として以下の三点がある。

  1. 動気針法
  2. 牽引針法
  3. 倒馬針法

動気針法とは治療穴を刺激しながら患者に患部を動かしてもらう、或いは手を作用させたい患部に当てたまま刺鍼する。つまり信号(意識)を患部に集中させることで気を動かそうという趣旨がある。むかし学生の頃、痛みのある箇所に直接刺鍼して患部を動かす「運動鍼」というのがあったが、患部を動かすという点では似ているが、そこに経絡という概念はないため、それとはまったく似て非なるものである。

牽引針法とは健側の治療点に巨刺し、今度は病側にある関係する経絡の遠隔にも一点取穴して、更に効果を高めようとする取穴法である。例として坐骨神経痛ではよく霊骨大白穴を使用するが、症状が主に後面あれば太陽経と考えて患側の束骨に一本取穴したり、或いは肝に起因しているようなら太衝に取穴すると言った具合である。

そして③の倒馬針法とは、治療点に取穴して効果が足りない、もしくは軽減をみる場合に治療点の近隣に更に一本追加して刺鍼する針法である。簡単にいえば刺激量の倍加である。日本的思考だと効果があるにしてももっと痛くない、もっと気持ちいい方法はないかと模索しようとするのに対し、効果があるのなら更に刺激を強めようというあたりがいかにも中華思想的である。

ところでこの「倒馬」という言葉にはどんな意味があるのか、何故「倒馬」というのか、董氏奇穴に触れた当初から疑問に思っていた。恐らく民間的にそのような表現があるのだろうとか、単に自分の国語能力が足りないのだと思い当時はあまり気にも留めなかったが、時が経つにつれ徐々に疑問に感じるようになり、そこで色々調べたり聞いたりしてみるのだが一向に腑に落ちる答えが得られない。

しかし時代は便利になったもので、以前なら調べても解らなかった情報が、今ではネットで根気よく検索すれば少しは手がかりがあるものである。現時点で調べて分かった情報を元に考察してみたいと思う。


 

倒馬の意味②に続くー