「食えない資格」といわれる鍼灸

「足裏についたご飯粒」
いつぞや何気なく「鍼灸師の年収」とググってみたときのことである。鍼灸師の年収について様々な記事や書き込みがあったのだが、そのほとんどがー「開業してもすぐに潰れる」「柔道整復師の資格のほうが安定」「就職先が無い」というような文面ばかりが目立っていた。更にはどこか書き込みには「鍼灸師の資格とかけて、足の裏の米粒と解く〜」という謎かけがあり、「その心は?」というと、
「取っても食えない。」
と書いてあったのをみて心底大笑いしてしまった記憶がある。まったく言い得て妙である。
どうやらすっかり世の中的には鍼灸師という資格は食えない資格という烙印を押されているのは確かなようで、いわんや「お金より人の役に立つ職業」やら「お金が欲しいなら他の仕事がよい」、「考え方をシフトすれば魅力ある職業」と、もはや人道支援・ボランティア精神あふれる人向けの職業という感がすらある。挙句の果てには学校で教えている鍼灸の「先生」までもが、「整体師」「エステティシャン」「スポーツマッサージ」など「鍼灸ができる〜になろう」的な、鍼灸の資格は付加価値としてはあったほうが良いと学生に指導しているようなのだから悲しくなる。一方、他にきちんと治せて稼いでいる鍼灸の先生の意見はないものかと探してみるも、検索が下手なのかあまりパッとした意見がヒットしない。昨今、巷の治療院を見てみても、メニューには鍼灸治療とあるのに「◯△整体院」と無資格の名称をつけて開業している鍼灸師が多いところからみても、鍼灸のみで経営を続けていけるのは少ないのだろう。とはいえ、毎日患者さんの苦痛に向かい合い、眠たいのを我慢して勉強し、経営的な事も勉強したりと、そんな日々努力している鍼灸の先生が、ネットに親切丁寧に書き込み、親身に答えるほど暇では無いとも考えられる。
「就職先が無い」「年収200万以下」と言われる鍼灸師
ネット上のQ&Aなどでも「鍼灸師の資格を取りたいのですがどうですか?」という質問に、「年収が200万もない」「無資格の整体師のほうがマシ」とか「学費の無駄」と書かれている。あま師など他の有資格者からそう言われるのならいざ知らず、整体師などそもそも教育機関も試験制度も整っていない無資格者からそう言われるのだから目も当てられない。

では、鍼灸師という資格は本当に食えない資格なのかといえば「そうとも言えるし、実のところそうでもない」というのが結論だ。「なんだそりゃ!勿体ぶらずハッキリ言わんかい!(怒)という声が聞こえて来そうだが、勿体ぶりたい訳ではなく単に鍼灸師という職業ほどピンキリが激しい職業はないからである。それこそ年収200万の雇われ鍼灸師から、一人で開業して1000万、弟子がいてウン千万売上る先生もいれば、マッサージをメインに一日三、四人施術して細々やっている先生、雇われで月額40万位貰えるようになってしまい、今更イチから独立したくてもできない先生だっている。東大出たから必ずお金持ちになれる訳ではないように、鍼灸の資格があれば食っていけるとは限らないのである。そこにはどうしても目指すべき方向性と勝ちパターン、ノウハウというものがあるし、そもそも病める患者と向かい合う日々を一生送る覚悟がないのなら、よっぽどヤメておいた方がいい職業であることは間違いない。
とはいえ、ネット上でここまで鍼灸の資格が悪く書かれると、鍼灸師を目指そうと思う若い世代もいなくなり、強いては鍼灸業界全体の衰退に繋がりかねない。そして最後に困るのは他でもない、将来の鍼灸治療を求める患者さん、鍼灸でないと治せない患者さん達である。
